日本語の「ん」

みなさんこんにちは!

全国高等学校野球選手権大会が始まっています。先日開会式がありました。そこで山崎育三郎が歌った「栄冠は君に輝く」が素晴らしく、日本中から賞賛を受けています。(我々世代には懐かしいモーニング娘。なっちの旦那様ですね。)

ネットの中で「こんなに美しく聞き取りやすい『ん』は初めてだ!」のようなコメントを私はたまたま見つけたのです。日本人が当たり前に使っている「ん」ですが、何通りの発音があるか知っていますか?

「1通りに決まっているじゃないか!日本語は1文字1音!そうだろ!」というふうに思った方、ありがとうございます、大間違いです!実は5通りもあるのです。5通りですよ!「ん」1文字に5通りの発音方法!近くの方と一緒に「せーのっ、ん」と言ってみてください。きっと違う発音をし合うはずです。

細かく分けると5通りですが、そのうち2つはよく似ているのでカウントせず、「『ん』の発音は3通り」という説明もあります。今回はその3通りをメインに説明したいと思います。これ、結構おもしろいです!私は鬼滅の刃ファンなので、キャラクターの名前で紹介したいと思います!

まずは「竈門炭治郎(かまどたんじろう)」「甘露寺蜜璃(かんろじみつり)」です。この「ん」は舌先を上の前歯裏側に当てて出す音です。「ん」の後ろにタ行、ダ行、ナ行、ラ行が来たときにこの発音になります。「歯茎鼻音」と言います。

次に「魘夢(えんむ)」です。この「ん」は上下の唇がぴたっとくっついたまま出される音です。バ行、パ行、マ行が続くときにこの音になります。「両唇鼻音」と言います。(魘夢以外で私にはキャラが見つかりませんでした…)

「我妻善逸(あがつまぜんいつ)」「宇髄天元(うずいてんげん)」はどうでしょうか。これは口を少し開き、舌先は口の中のどこにもつかない状態で出される音です。ア行、サ行、ハ行、ヤ行、ワ行はこの音です。「パン」「金」「本」のように「ん」で終わる言葉は全て同じ発音になるはずです。「口蓋垂鼻音」と言って、結構複雑な動きを舌はしています。舌の後ろのほうが口の中の奥の上側について出る音です。その発音も「パンだけ買った」「金箔」のように後ろに言葉が加わると、「歯茎鼻音」や「両唇鼻音」に変わるのです。

あと2つは「軟口蓋鼻音」と「硬口蓋鼻音」と言うのですが、軟口蓋鼻音は口蓋垂鼻音に、硬口蓋鼻音は歯茎鼻音に似ているので、「ん」の発音は3パターンと言われることがあるのです。興味がある方はまたご自身で調べてみてください!

なぜこんなに発音が違うのかというと、次の言葉を言いやすくするためです。それは英語でも同じです。「なんで母音(a,i,u,e,o)の前は an になるのですか?」と質問に来る生徒さんがいますが、言いやすくするためです。「I have an apple.」を「I have a apple.」にするとかなり読みにくいです。「a + 母音(a,i,u,e,o)」は母音が連続で発声されて非常に言いにくいので、「an + 母音(a,i,u,e,o)」にして読みやすくしてあるのです。

「あぁ栄冠は君に輝く」の部分。ゆっくりと歌ったときに「えーいーかーんはー」となりますが、この口蓋垂鼻音「ん」をはっきり出すのが難しいです。それをクリアーに出せる山崎育三郎。さすがミュージカル俳優、かっこいいです!