リスニング力をつけるには?!

「映画を英語で見ましょう」「英会話のラジオを聞きましょう」「リスニング問題をたくさんやりましょう」「聞き流しでいいので、とにかく英語をシャワーのように浴びましょう」などなど、『リスニング力UP=英語をたくさん聞く』とよく言われます。それはきっと間違っていないと思います。しかし、それ以外にリスニング力を伸ばす方法はないのでしょうか。

あります。特に英語を学習しだしたばかりの小中学生、リスニングが苦手だと感じている人にはもっと効果的な方法があります。

それは「英語を正しく読むこと」です。

「んっ?違う違う、『リーディング力』じゃなくて『リスニング力』を上げたいんですよ!」と思った人がいてくれると嬉しいです。英語の聞く力を鍛えるために、自分の英語を読む力を鍛えようということなのです。なんかズレている気がしませんか?

でも、これが本当に効果のある方法です。先日ある当塾の中学生の中間テストの答案を見ていると、なぜかアンバランスなほど筆記テストとリスニングテストに差がありました。リスニングがやたら取れていないのです。筆記はとてもよく取れているのに、なんでなのかと思いましたが、すぐにその理由がわかりました。

その塾生を呼んで「この自分が書いて正解している英語の文章を音読してみて」と言うと、単語の読みを間違えるのです。「じゃあ次にこっちのこの文章はどう?」と言って読んでいるのを聞くと、やはり単語を間違って読んでいます。ちゃんと書けていて、テストで正解している文章です。それなのに、読むと発音も違うし、そもそも音が全くかけ離れているものがたくさんありました。

この生徒は自分流の読み方をしている単語が多いのです。私も中学生のころ「Wednesday」を「うえどねすでい」と言って覚えていたことがありました。このようなローマ字読みなどは中学生にはよくあることです。しかし、自分では単語を覚えるための工夫がリスニング力の妨げになっているのです。

なぜ妨げになるのか、その理由はいたってシンプルです。「うえどねすでい」なんて英語では読んでくれないからです。数学の「math」は「ます」ではありません。「a」は「あ」ではなく「あ」と「え」の間のような独特な音ですし、「th」は舌を上の歯と下の歯に軽く挟みながら出す音なので、日本語の「す」とは全く違う音です。「math」を「ます」だなんて読んでくれるわけがないのです。でも自分は「ます」だと認識しています。これでは無理です。以前のブログで私が「重複」を「じゅうふく」と読んでいて「ちょうふく」という読み方を知らなかったので、会議でその言葉が出たときに意味が分からなかったと書きました。それと同じです。

リスニング力の向上には、まずはしっかり正しく聞きましょう。教科書の単語を何度も聞いてください。そして次に正しく発音できるようになりましょう。ひたすら真似をしてください。そして同時進行でその単語の意味を覚えましょう。さらに教科書の本文を手本のように読む練習をすると効果抜群です。英語のリズムが掴めるようになり、自然と意味の区切りや文のつながりが身についていきます。正しい発音で読めるようになると、絶対に聞けるようになってきます。

話は少しズレますが、むやみやたらに英語を聞いているだけではリスニング力は上がりません。自分が知っている言葉が流れるものを聞かないと、リスニング力のトレーニングにはならないのです。私は日本人ですが、東北の方言を聞いても全くわかりません。九州の方言も無理です。沖縄の方言も無理です。じゃあそれらを聞けるようになるために方言だけを録音したものをずっと聞き続けていれば、いつかわかるようになるのでしょうか。大学生時代に、鹿児島の友人が「わっぜよかにせじゃっど」と言ったのですが、みなさんは意味が分かりますか?この言葉の意味を知るために、何度も何度も聞くことで意味がわかるようになりますか?

答えは絶対「NO」です。何万回聞いても、その単語の意味や文章の切れ目などを教えてもらわないと、いつまでたってもわからないです。「わっぜ=すごく」「よかにせ=イケメン」「じゃっど=だよ」だそうです。

「赤ちゃんはたくさん日本語を聞いて、自然と理解するようになる」と言われますが、少し誤解があります。赤ちゃんが自分だけの力で言葉を理解したのではなく、周りの人が言葉を教えているのです。車のおもちゃを持てば「それはぶーぶー、車だよ」、お母さんの顔をじっと見ていると「お母さんですよ~。言ってみて。せーの、おかあさん。」のように、周りがたくさんサポートしているのです。だから言葉を覚えるのです。これがなければ言葉を理解することは限りなく難しいです。極論ですが、ただ聞いているだけで言葉を理解するのならば、犬の言葉もカラスの言葉も猫の言葉も、ひたすら聞いていればいつかわかるようになるということです。それって無理じゃないですか?

たくさんの英語に触れることは絶対大事です。洋画を見るなんて映画好きには最高のリスニングのトレーニングですよね。ただ、自分の力に合ったものが必要です。これは気をつけておきたいポイントです。

リスニング力向上には、まずは自分の発音を鍛えよう!